はじめに
「若者がみんなが選挙に行けば、若者の意見も聞いてくれるようになるのでは?」
「政治家って経験豊富だったり有名な人がなるものでしょう?」
「選挙に出てみたいけど、当選できる自信がない…」
選挙の投票率は年代に比例しており、20代は30%、40代は50%、60代は70%と年代によって大きな差があります。年代が上がるごとに投票率は高くなるうえに、現在の人口の約30%が60代以上で占められており、高齢者は自分たちの声を政治に反映させやすい状況になっています。
一方で、奨学金問題や消費税増税、「自分たちが払った年金がもらえないのでは?」という社会保障の構造に対する不安感など若者を取り巻く政治的課題も多く存在していますが、なかなか政治の世界で取り上げられません。
このような状況を変えるために、若い世代が選挙に出て議員になることで直接的に若者の意見を政治の世界に届けることが求められています。
しかし選挙に出るには様々なハードルがあると考えられており、若者がなかなか選挙に立候補できないのが現象です。そこで今回は、若者が選挙に出ることがどれだけ現実味があるのかをご紹介していきます。
目次
1.選挙に行くだけでは、若者の意見は通らない?
2,地方議員の現状
3.若手議員の当選確率
4.若者が選挙に出る強み
5.政治に関する知識や経験は必要?
6.「政治家」や「地方議員」という選択肢を
1.選挙に行くだけでは、若者の意見は通らない?
公益財団法人明るい選挙推進協会では国政選挙のたびに年代別の投票率を公開しています。この投票率の推移を見てみると全体的に投票率が下がっているものの、特に若者の投票率が顕著に低下しているのがわかります。この章では「若者の投票率が上がれば若者の意見が通るか?」を考えてみましょう。
引用:公益財団法人明るい選挙推進協会「年代別投票率の推移」http://www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2012/07/Snennrei.png
(1)年代別投票率の推移と選挙に行かない理由
「若者の選挙離れ」は平成に入ってから急激に進行し、 20代の投票率は平成2年の57.76%から、 平成29年の33.85%まで半数近く低下しています。投票率が低下する理由については様々な調査が行われていますが、日本財団の「18歳意識調査(第15回調査)」では選挙に行かない理由を「時間がない」「支持する人がいない」「情報がない」「興味がない」としており、若者が選挙に関心を保つための施策として「若者向けの政策を掲げること」「若者向けの政策を掲げること」「若者向けの政策を掲げること」を挙げています。
つまり、若者向けの政策を掲げる政治家がいないことが若者の投票率を下げ、若者の投票率が下がった結果、ますます政治家は若者向けの政策を行わなくなるという悪循環に陥っていることがわかります。
引用:日本財団「18歳意識調査(第15回調査)」
(2)若者が選挙に行くだけで世の中を変えるのは難しい
地方議員である私も、より多くの若者に選挙に行っていただき、若者の声を政治に反映させていきたいと考えています。 しかし一方で、全ての若者が投票してもその他の世代に比べて意見を通しにくいという構造的な問題にも向き合わなければいけないと感じています。
引用:総務省「人口推計」・「国会議員の選挙における年齢別投票状況」より執筆者作成
このグラフは、衆議院議員選挙における世代別の人口と投票数をグラフにしたものです。人口・投票数共に、20代や30代は他の世代に比べて圧倒的に少ないのが現状です。
民主主義の原則は多数決ですが、そもそもの人口が少ない若年層は、仮にどれだけ多くの投票率を記録したとしても他の世代よりも多数派になることはできません。極端な例ですが、20代が全員投票に行ったとしても、現在の60代や70代以上の投票数を上回ることはできません。
「シルバーデモクラシー」という言葉がありますが、多数決によって政治の意思決定が行うことが民主主義の前提です。この絶対的な人口構成の差からくる無力感も若者が「どうせ選挙に行っても変わらない」 と考える一因であると考えています。
(3)政治家の意識を変えれば良いのか?
政治家がもっと若者に関心を持てば問題は解決するのでしょうか。残念ながら現状では、政治家が若者に関心を持つ事は難しいと言えるでしょう。下の表は、衆議院議員選挙で投票したすべての投票者を年代で分けた表です。
総務省「平成29年第48回衆議院議員選挙結果」と「人口推計」より筆者作成
ご覧の通り20代は7%。30代を入れても20%にも達しません。一方で60代は24%、70代は28%と60代以上だけで投票者の半数近くを占めています。これだけ世代間の差が出てしまうと、政治家としても高齢者を優先せざるを得ない状況にあります。
引用:内閣府「男女共同参画白書(概要版) 平成30年版」
政治家の意識を変えてもっと子育て支援に力を入れるように依頼しても、高齢の政治家が多い現状では昔と今の子育て環境が大きく異なっていることが理解してもらえません。
地方議員の平均年齢は約60歳ですが、彼らが子育てをしていた30年前は共働きの世帯は全体の約35%でした。しかし平成29年の内閣府の調査によるとこの数字が逆転し、専業主婦の世帯は約35%まで低下。残りの65%が共働き世帯となりました。
つまり、自身の経験から子育てを語ってしまうと、専業主婦の妻がいて、家族の支えの中で子育てができるのが当然という価値観で子育て支援政策を語ってしまいます。すると待機児童問題や片親世帯の支援など、現代の子育て世代の抱えている課題とは全く違う政策を立案してしまう可能性があります。
熱心な議員さんであれば、今の子育て環境が昔と違うことを理解して、令和の時代にあった子育て支援政策を立案することができますが、そのような意識の方はごく僅かです。
一部の熱心な議員さん以外は、価値観が均一で、人口が多く、投票率も高い世代から支持を得た方が選挙で当選しやすいので、どうしても高齢者世代に目が行きがちになってしまいます。
このことから、政治家の意識を変えるというのもあまり現実的ではありません。
2.地方議会と地方議員の現状
次に、地方議会における地方議員の現状についてご紹介していきます。
(1)地方議員の平均年齢と年齢
地方議会議員は高齢の方が多いイメージですが実際にどうなのかを調べてみました。現在公開されている最新の情報である、第18回統一地方選挙結果(総務省)の調べによると、以下のような平均年齢です。
<区分別平均年齢>
県議会議員 :57歳
政令指定都市 :54歳
特別区(東京23区):52歳
市議会議員 :58歳
町村議会議員 :62歳
このように、都市部ほど平均年齢が低く、地方ほど平均年齢が高くなることがわかります。
(2)若手議員の当選人数
次に、年代別の人数を見ていましょう。
<県議会議員>当選者:2,284人
20代 :8人
30代 :191人
60代 :736人
70代以上:193人
<市議会議員>当選者6,865人
20代 :80人
30代 :804人
60代 :2519人
70代以上:592人
<町村議会議員>当選者4,265人
20代 :9人
30代 :111人
60代 :2,329人
70代以上:659人
統一地方選挙全体の当選人数が15,490人に対して、すべての地方議員の人数を合計しても20代は140人、30代は1068人です。全体の当選人数に対して20代30代は7%と非常に少ない割合です。20代の議員に至っては地方議員のうち0.9%しか存在していません。これでは若者の声を政治に反映させることができません。
しかし、逆に考えると若者が少ないということは、それだけ若さを武器にして選挙に臨むことができます。若手議員の支持層になり得る若者の投票率が低いものの、それだけ支持層が新たに発掘できる可能性があるとも捉えることができます。
若年人口の劇的な増加や投票率の劇的な上昇が見込めない以上は、若い世代の政治家を増やし、少しでも若者声を政治に届けていくことが重要だと考えています。
3.若手議員の当選確率
実際に、20代の議員の当選確率はどれだけなのかをご紹介していきましょう。
<20代議員の当選確率>
1、県議会議員選挙
立候補者:23人
当選者 :8人
当選率 :34%
2、市議会議員選挙
立候補者:118人
当選者 :80人
当選率 :71%
3、町村議会議員選挙
立候補者:10人
当選者 :9人
当選率 :90%
選挙の区分に関わらず、20代の立候補者数は235人、当選者数は140人、当選率は59%です。
県議会や政令指定都市など、当選に必要な最低得票数が5,000票を超えるような大規模な選挙での当選率は低くなりがちですが、当選ラインが1,000〜2,000票の市議会議員選挙や、当選ラインが500票〜1,000票の町村議会議員の選挙であれば当選率は7割を超えるので、十分に当選できる確率が高いと言えるでしょう。
4.若者が選挙に出る強み
続いて、若者が選挙に出る事の強みは何かをご紹介していきましょう。
(1)あらゆる世代から応援される
一般的な感覚としては、若手議員の支持層は若者だと思われがちです。しかし、実際には若者を含めた様々な世代から支持を得ることができます。
私も初選挙の時に、初めてお会いする地域の高齢者の方から「これからは若い人の時代だから、君のような人に頑張ってほしい」と声をかけてもらうことが何度もありました。また、仲間の地方議員の選挙応援に入っても同じように高齢者の方から声をかけられるので、「次の時代を頼む」という考えの高齢者から支持されていることが推測できます。
これは若手の地方議員が集まって意見交換をした際にも共通認識となっている見解なので、若者だけでなくあらゆる世代から応援してもらいやすいことが若者の強みといえるでしょう。
(2)地域と関わる期間が長い
若くして議員として当選するということは、それだけ長期間にわたって地域の政策に取り組むことができます。すぐに解決しない課題でも5年、10年とじっくり地域と向き合っていくことができる時間的な余裕があることも若者が選挙に立候補する強みです。
選挙に行く多くの有権者は「地域を存続させてほしい」「もっと良い地域にして欲しい」という共通認識を持っています。例えば選挙で「地域を未来に繋ぐ」というキーワードを打ち出して選挙を戦う場合には、恒例の候補者よりも若い候補者がこのキーワードを使ったほうが説得力が増します。
選挙に出馬する多くの候補者は、長年の実績を持って自分をPRしますが、これからの可能性や期待感を有権者に訴えることができるのが若者の強みです。
5.政治に関する知識や経験は必要?
「議員に立候補したいけど、政治の勉強をしたことがない…」という方もいるでしょう。この章では、政治家を目指すために政治の勉強が必須かどうかをご紹介していきます。
(1)立候補する前に政治の勉強をしておいた方が良い?
議員になる以上、政治に関する知識や経験は必要だと思われがちです。確かに、当選後は政治に関する知識が求められる場面が必ず訪れます。もちろん大学などの高等教育機関で政治に関する教育を受けた方が有利になることは間違いありません。
若手地方議員の中にも、当選後に政策の勉強をするために大学や大学院に進学するケースが見られるため、政策立案能力を高めるために進学するのは有効な方法であると考えています。
また、国会議員などの秘書として現場で経験をすることも有利に働く事は間違いありません。特に立候補予定の地域の国会議員秘書になることは地域に顔を売りながら実務経験を積むことができるので大きなメリットになるでしょう。
しかし一方で、政治に関する勉強を全くしていなかったとしても選挙に当選することはできます。選挙と政治は全く別物と考えておいたほうが良いです。いくら良い政策を立案しても、選挙に当選できなければ何も実現することができません。政治と選挙が別物であるということを理解することは議員を目指す上で重要なポイントです。
選挙に立候補しようと思った場合にはまず「どうやって選挙に当選するか」を学び、選挙に向けた活動に時間を注ぐ方が良いでしょう。
(2)選挙に向けた勉強って、どうやるの?
政治の分野の学問は「政治学」が基本です。様々な社会的課題を解決するために政治がどのように関わっていくべきか。どんな政策で課題を解決するべきかとということを研究する政治学は大学でも一般的な学問として取り扱っています。しかし、どうやったら選挙に当選できるかと言う「選挙学」というべき研究は研究室の1テーマとして扱われることがあっても、体系だった学問として行われているわけではありません。
今のところ、選挙に関する知識や経験は選挙の経験が豊富なベテランの議員が独自に持っているか、政党が各議員のノウハウを集約して蓄積しているかの2つの場所に集中しています。つまり、選挙の勉強しようと考える場合、これまでは議員秘書になってベテラン議員から直接ノウハウを学ぶか、政党に所属して学ぶしか方法がありません。
100万円単位の費用が調達できる場合には選挙コンサルと言われる専門家に依頼することも可能ですが、若手でそれだけの費用をコンサルティング費用として捻出できる陣営は少ないでしょう。
この、「どうやって議員になれば良いのか」という情報が少ない点も若い世代がなかなか選挙に踏み込むことができない要因だと考えています。
政治家を目指す人を応援する「TOUSEN」では、若い世代が選挙に立候補できるように、出馬を決めてから選挙戦を戦い抜くために必要な情報提供を記事を通して若い政治家が増えるサポートをしていきたいと考えています。
6.「政治家」や「地方議員」という選択肢を
若くして政治家や地方議員を目指そうという人は多くはありません。 しかし政治の世界では若者の数が絶対的に不足しています。若い政治家が少ないことで困るのは、私たちの世代だけでなく次の時代を生きる子や孫の世代です。
政治家というキャリアは皆さんの思う以上に現実的な選択肢です。政治家になることを目指している方は、ぜひ次回の選挙に立候補して頂きたいと考えています。
また、今は議員になることを考えていない方でも、世の中をより良くしたいと考えている思いがある方であれば、しっかりと役割を果たしていくことができると考えています。これからの皆さんのキャリアプランの中に政治家や地方議員という選択肢をどこかに入れていただければと思います。
「TOUSEN」では、今後も初めて政治家を目指す人に向けた情報発信を継続していきます。
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